金曜日, 10月 03, 2014

会うために

昨晩は「詩からストリーム」に、画家の岡本健児氏と、アーティストの森田美里さんにゲストで出て頂き「絵と言葉について」と題して話した。岡本氏は個展のために描いた絵の数々に対し、「untitled」というタイトルから脱却していく意識の流れを話してくれた。森田さんは絵も描くけれど、最新作は立体で、でもその個展のタイトルが「山をつぶす人」という極めてポエティックなタイトルであったから、話は膨らんだ。拙くとも良いのだ。必要なことを話していれば。

毎回「詩からストリーム」ではトークの前後に詩を読む。その詩から始まり、詩に戻っていく流れだ。後で、今回読んだ即興詩を思い返していたので、録音を聞き直して書き出した。ここにそれを記しておこう。
今日はずっとデスクワークデイである。詩性を取り戻すため、音楽をかけるだけでなく、詩を書き出す。ブログなので横書きで。


会うために
               村田 仁
op.
会うために
待っている
月の大きさを伝える
今日は月がきれいで
部屋にずっといた
窓から屋根に降りることができる
一時からずっと、今日の月はきれいと知っていた
窓の前に紙を置き
吸えない煙草を置いておく
コーヒーの淹れ方を何度も訊く
君は電話に出てくれない
そのときつきあっていた彼女とこの映画を見に行った
ゆっくりと丁寧な自慢話を
月の前にしておく
月の終わりと月のはじめ
一枚隔てた私たちの背中
会うために
待っている
絵はどこへも行かない

ed.
会うために
月がきれいで
脳みそを開いて月を出したい
背中同士
一日の間
言わないでほしい
きれいなことを

窓の前に紙を置いて
紙を窓にして円を描く
描くまでの間に
きれいと言わず、
伝えようと
円を描く
これは円です
個室に君が入って来て円の在処を訊く
君の脳みそを描いたわけではない

会うために
月がきれいで
このビルで背中同士
一日の間
ずっと個室にいる
私の身体が横たわり
もう一度脳みそまで入っていく
扇風機がずっと私の身体を裂いていく
月は何度も降りてくる
絵にそれを何度も描く
個室はまだ終わらない
円のかたちをした
塊を放り込んで
絵は続く


http://www.ustream.tv/recorded/53478995

http://kenjiokamoto.jimdo.com/
http://www.n-mark.com/projects_morita.html