日曜日, 5月 01, 2011

わたしが不思議から、友達の唄へ

1986年、当時小学生だった自分は母親と弟と、松阪市郊外にある線路沿いの映画館で 生まれて初めて映画を見た。
大長編 ドラえもんの七作目、のび太と鉄人兵団(監督, 芝山努)だった。

本日、そのリメイクである「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜」(監督, 寺本幸代/2011)を名古屋市北区の映画館で見た。
ほどほどの期待値で望もう。
クライアントからのオーダーのようにリメイク版には新キャラ「ピッポ」がおり、とげとげしい設定であったリルルは優しげなデザインに変わっていることを知っていた。ピッポは残酷非道であったジュドの頭脳が変化するという。骨抜きの展開なのではないかという一抹の不安。
いや、ほどほどの期待値にしなければ。
旧作が消えて無くなるわけではない。大人の都合は 86年にもきっとあった。そこで戦うのは原作者から思いを託された監督だ。

寺本幸代監督が手がけた鉄人兵団は 見事に新解釈で構成されていた。
リルル、ピッポらが思いやりと友情に芽生える理由をエピソードを設けて肉付けしてあり、ある意味、藤子F不二雄が信じて疑わなかった 思いやりの心を持つことの大切さが、より物語として理解できるようになっていた。
それ故に戦争の局面に挟まれてしまうリルル苦しみがやや薄まっている。いや、今回は新しいメッセージへシフトされている。主題歌が「わたしが不思議」ではなく「友達の唄」に変わっているのだから。

旧作では性格の無かったザンダクロスがピッポになったように、ロボットが道具としてのみではなく親しみのある愛玩的な存在として描かれている。
ミクロスは可愛くないのでメインをはらず、ピッポがザンダクロスと共にメインをはってくる。ここは空き地サイズに留まっていたキャラの関係を 映画らしくダイナミックに拡大しつつ、ピッポのおかげで親しさも保持するという巧妙な離れ業を寺本監督はやっていると思う。
同時にドラえもん自身もロボットであることが照射される。旧作では疑われなかった部分だ。何故に旧作はそこが問題視されなかったのか。86年は「メカトピア対地球」という国の対立だと捉えられていたが、現代は人種や思想対立の時代で、「ロボット(思いやりのない性格)対人間(思いやりのある性格)」という構造が主に出てくるのではないかと考える。そのとき性格の無い道具としてのロボットでは味方だと捉えにくいから、ピッポが出てくるのだろう。

僕は、鉄人兵団は大長編のなかで最も勇ましい話だと思っている。
本作はハッキリと戦争をしている。地球の運命をかけた戦いは他にもあるが、集団による戦争をしているという印象が鉄人兵団には強い。ロボットという男の子が好きなテーマを取り出し、果ては空気砲のみに懸けて戦うのび太、ジャイアン、スネ夫、ドラえもんらのなんと血気盛んなことか。
原作漫画で 湖前の最終決戦を穴から顔を出しながら構えているドラたちのコマは最高にかっこいい。
そんな武力行使しかできない男達に対し、リルルとしずかちゃんという女性らが、知性を持って戦争をやめさせるという協力プレイがまた素晴らしいのだ。
リルルの葛藤は私自身が創世主になるという大義で決着を迎える。そういえば日本で一般的に神様は何故 男として描かれがちなのだろう。メカトピアの神である博士は 御茶の水博士のようなキャッチーさもなく地味に老いて倒れていく。リルルは思いやりの心に芽生えながら、祖国を裏切れない。だから祖国を作りかえることで全てに答える。根本的にみんなの考え方を変えてしまう。

メカトピアではそれができた。
アニメの外であるこの世界ではタイムマシンは無いから、戦争を避けながら、問題を話し合うしかない。
のび太たちが、鉄人兵団の使いの ジュドと落ち着いて話し合う為に「おはなしボックス」を使ったからピッポは生まれる。
ジュドのままでは何も分かり合えなかったかもしれない。
それは、リルルもそうだった。
ただ、ピッポはのび太に助けられたり愛されたのに対し、リルルはあまりにもかわいそうである。
「わたしが不思議」はそれを讃える歌で、思いやりへの葛藤だ。
それはロボットが人間になれないという悲しみと関わっているのではないか。鉄腕アトムから受け継がれた葛藤は、リルルからピッポへ 愛玩的な友情に果てたのか。
いや、ドラえもんの存在は愛玩的な友情ではない。
子どもらのなかにいる大人。保護者であり、ときに教育者であり、夢を見せてくれる友情だ。
リメイクされたドラえもんは、大山のぶ代の声による母親的なキャラから、水田わさびの友達キャラに変化したと思われるが、大人であることは変わらない。

2011年、同時上映のプロゴルファー猿はなく、3D 眼鏡も支給されなかった。オマケのドラえもんのオモチャがフルカラー着彩に進化していた。フルバックで走るのは同じだった。
「友達の唄」はサビがいいなぁ。
PV の出だし、町並みを見下ろしている映像は、86年の 鉄人兵団の出だしと合わせてあるのがニクイ。

http://doraeiga.com/2011/
http://www.youtube.com/watch?v=ZYaxzjP6x30
http://www.youtube.com/watch?v=WfB79A7EKxo&feature=related

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