階段を上ると愛想笑いの男が待っていて、順序良く説明をはじめた。
「あなたの行いは宝くじ二枚ぶんであります。
この招待券は "くじ" ではありませんから、是非 有効に使って下さい。」
声が遠のき、カーテンが開いてすぐ閉じた。暗がりでは誰が誰だか分からない。
押し入れの奥で眠っていたマフラーを撫でる。
"あなたの行い"
反芻する。
これは技術の問題では無くて、情熱の問題だ。
要領良く、男は朽ち果てることを勧めた。
それを聞くとなおのこと、泣いてもいいかなと尋ねたくなる。
女は何も知らないと言うだろう。
女は脳みその色彩をがばっと開く。
「おしぼりはべんりだね」
と私は言った。
たとえ、ここで泣いていたとしてもそう言ったと思う。この言葉には約束されていたのだ。
男を殴り、私は階段を下りた。