「幽閉者・テロリスト」(監督,足立正生/田口トモロヲ、ARATA、PANTA、荻野目慶子、赤瀬川源平、若松孝二/音楽, 大友良英/2006)は、優しい語り口が恐ろしい。
映画の宣伝文句にあるように、この映画が作られて発表されること自体が事件だ。
低予算映画の宿命か、人物の心理描写は顔の表情を撮ることだと信じているからなのか、アップが多くて画面が苦しい。その感じが逃げられないどん詰まり感にも繋がって効果的ではある。「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(監督,若松孝二/2008)もそうだった。
この手のカルトばかり見ていると狂信的だと思われがちだが、斜に構えて見ている。テロリストというのは哀れなまじめっ子なんだなと思う。おそらくは通りす がりの赤の他人が言っていることを真に受ける性格だ。やりきれないもの、まちがったものを許せないあまりに、まちがったところに落ち込んでしまう。しかし この映画の恐ろしいところは、その姿を美しく散るようなかたちで消してくれない。例えばヤクザの任侠映画のように、自己陶酔を最終目的とはしていないと思 われる。
常に問題はできるだけ現在形に置こうとされ、自己矛盾への追求が、無力を積み上げてなんとか力を得ようとする言葉の構築にも似た、呼びかけ、アジテーショ ン、独白、朗読が続く。それは不毛の美学ではなく、もっと肉迫している。PANTA が語るエンディングは銀幕を超え、鑑賞者へ託される。
まだ生きる戦いは続くと。
テロリストは自らのまじめさを笑うことができない。
だから映画を撮るのだろう。
社会を変えるために詩を読もうとは、僕は思っていない。
どう読むかは自由だから。
http://www.prisoner-m.com