金曜日, 6月 20, 2008

高層ビルの上で背筋を伸ばしても、そのまま

作家は待ち続けていた。無垢な絵描きは待つことの表明すらしない。恐ろしいほどの時間が過ぎた。美術と呼ばれる価値観は停止したままだった。聴こえる声は 爽やかではあった。しかしもっと大きな問題が実はある。高騰した絵画と、紙くずの間を行き来するのは無垢な少女であった。少女が裏のある言葉を発して、無 垢でも何でも無いということが見え透いたとしても、僕たちは無垢な少女だと五月蝿く書いた。写真はいびつに固まりつつある。僕は和服の女性に話しかけるの がはじめてだった。高層ビルの上部にある石庭に降り続ける雨を見るのも。鬱積した行いをどう諌め、どう慰めるか。雨降りと雨降りの間にある少しの夜道を散 歩した。待ち続けていたことに礼を告げるのは僕の希望だ。今夜も机上スタジオへは行けない。依然、美術と呼ぼうとする価値観は停止したままだ。