グリーンに漬けられた鴨は決して怯えていない。
堂々と東の国で差し出した。その身を。
飛行機ではなく船でやってきた。
時間ばかりあって、お金が無かったから。
その間ずっとグリーンのなかで、
ぽこぽこと気泡を出しながら
国があるということを思い浮かべていた。
鴨には国をイメージするのがたいへんなことだった。
大学の研究では、鴨の脳にはそれを認識することはできないとなっている。
またもや男の蘊蓄が飛び出し、
テーブルにはやっと言葉がぽつりぽつり。
それから、男と女の胃袋のなかで、
グリーンを放つ。
鴨は、自分が鴨であったことを胃液に任せたが、
国のイメージだけは手放さなかった。