木曜日, 11月 06, 2008

旅を剥き出しにしている姿

「ザ・ノンフィクション "路上"」(フジテレビ/2008)を見た。
三年間に渡る、路上生活者の記録。「旅」という言葉がどんどん出てくる。
はじまりは、新宿のテント村。十五年間住んでいた。
区画整理で追い出され、そこから旅がはじまる。
その方の名はオルカ。繁華街でパントマイムをして、その投げ銭で生計を立てていた。
その金でゴールデンバットを二箱、一升の合成酒を買い、朝までちびちびやるのが日課。
出身の北海道に戻り、道内を転々とする。
母親は、縄でくくって引き返しても、飛び出してしまうだろうと言う。
実家で二人、すき焼きをして、日本酒を飲み、その方は川辺に出ていた。川辺は子供のとき虐められて、逃げてきたところだった。旅立ちの朝、髭を切るようにと母は大鋏を持ち出して来る。危ないな、怖いと笑う二人。長い髭は短くなった。
家には帰れない。ここにいることはできない。
やがてホームレス支援者の力により、アパートへ入居させてもらう。集団生活に合わせられず、酒癖も悪く、そこを出てしまう。また誰かに別のところへ入れてもらう。旅は、居場所を探す行為だった。
三年後、新聞配達をしながら酒もそこそこに、その方はやっていた。
いまは屋根と布団のあるところで、誰にも怒られることなく眠れることが一番の幸せだと言っていた。長い旅の疲れを癒すように、いまは眠りたいと言っているのと同じだった。
眠るときもある。次の旅のために。そして旅のかたちもまたそれぞれだ。
番組はそんなふうに終わる。
その方の夢がどういったものか、そこには迫っていなかったが、旅を剥き出しにしている姿で充分だったのだろう。
ニュースに変えると、奇しくも小室氏の詐欺についてをやっていた。