日曜日, 4月 03, 2011

社長と識者とジャーナリスト

ソフトバンクの孫正義 社長が Ustream で対談番組「東日本大震災について」を行った。
ちょうど昼に 社長が個人的に、百億円と今後も含めての寄付を表明して話題になっていた。
番組には 後藤政志氏(元 東芝 原子炉格納容器設計者)と 田中三彦氏(元 バブコック日立 福島第一原発 4号機 原子炉圧力容器設計者)、田原聡一朗氏(ジャーナリスト)、孫 社長 が出ていた。

連日の原発報道、政府と東京電力を批判するかたちで、番組は進んだ。「大丈夫」を繰り返す一連の報道を疑い、あえて最悪のケースや考えられうる事態が解説さ れていった。不安を煽るわけでもなく、冷静に進んでいたと思う。自分は布団に潜りながら相づちを打ち、途方にくれたり呆れたりのおおよそ一般的な反応をし ていた。Ustream の画面右は、Twitter と連動して一般視聴者のコメントが流れるようになっている。番組内容に突っ込みを入れることができる、Ustream のキモな機能ではあるが、見ていてあまり良い気持ちにはなれない。昨日のライヴのときなどは楽しいのだけれど、対談では殆どが野次だからだ。嫌なら見なけ ればいいのだが、そのなかで目立ったのが 田原聡一郎氏の発言に対する不満であった。理解はできる。朝まで生テレビと同一の司会のような調子で、解説をぶった切り、持論を展開したいかのように強引 に話を持っていくし、妙に素人ぶったり、玄人ぶったりもする。何様だと思わせるところもある。
だが、自分には 敢えてそんなスタンスをとっているのでははないかと思えて仕方ない。
番組の後半、脱原発か推進かの議論となった。識者の二名と社長は反原発を進めるべきだと言う。それに対し、田原氏は脱原発は無理だろうと意地悪なことを言う。フランスはどうなるんだ。何はどうだと言いたいことだけ言って、氏は退席してしまった。
時間的なことで既に決まっていたのようだったが、あまりにもコメントで退席しろと叩かれていたから、まるでそれに合わせたかのようでびっくりした。
コメントは退席を喜び、三名での話をじっくり聴けると湧いていた。この番組の主旨がよく分からないところに浮いているように思えた。
そして議論は面白くはならないだろうと思った。
そこから始まるのは、正しい社長が識者に同意を求めるという時間である。何も間違ったことはしていないし、実に正しいのだが、これは対談ではなく、殿様の時間だ。社長とはそういう存在なのかもしれない。
この番組自体の構成も社長がしている筈だろうし、田原聡一朗氏を入れているのもテレビメディアとの関連など 効果を考えてのことでもあると思う。議論の期待もあるだろう。社長とはなんとしたたかだろう。

原 発の問題について 社長はいままで容認派だったことを反省していると話した。そしてこんなことになったからには、なんとしてでも脱原発だと声を強くした。喉元過ぎれば何事も なかったかのように原発を動かし続けるであろう社会に対して、怒りと危機感を持っているというのには、同感する。
だが、放射能が漏れ続けることがどういった事態を引き起こすか分からないという話を聞きながら、「携帯電話の電波が人間に与える悪影響」という問題も、実は容認されてここまで来ているんだよなと意地悪なことを考えてしまう。放射能と電磁波は違うが、何も分からない。

そんなことは分からないのだから、みんな分からないんだと考える。
ただ、社長は面白いだろう。
悪趣味にも 藤子不二雄Aの「社長幼稚園」(1970)を思い出す。

流れていくコメントのなかに ときどき、田原氏は言葉を引き出す為に敢えてこうしているのだというものもあった。議論がつまらなくなるというのも。
ソフトバンクは繋がりにくくてダメだけど、社長は好きだというコメントもあった。

http://www.ustream.tv/recorded/13773062