朝ご飯をしっかり頂き、長男はまた電車で発った。向かうは伊勢湾をぐるりと回っての、常滑であった。船なら40分のところを、二時間ほどかけて移動。金銭面と、そこまで急いでいないという時間的判断からそうした。空港へ急いでいるときはいいだろうけどなぁ〜とぼやく。
駅から歩き、臨海緑地と呼ばれる人工海岸へ。送られてきた告知メールによると、永田氏率いるニュースペーパーズが、いま常滑で行われているまちなか系アー トの展示「常滑フィールド・トリップ」に共鳴(?)するかのタイミングでライヴをやっているらしいので、それを聴きに。こっちでいいのかと不安になりなが らも歩いて行くと、ドラム音が聴こえてきて、サークル状に組まれたバンドが出現したではないか!
おおっ!と驚き、唸りながらデジカメで勢い良く撮影する。
音楽も絵面も即興的でカッコイイ。
何よりも良いと思ったのは、客に媚びない姿勢である。
弾いている顔が良い。顔で弾いているとは鈴木氏が敬愛するミュージシャンに言った言葉だった。そうだなと思う。すると、そこに常滑在住のアフリカ人らが二人やってきて、ジャンベやボンゴに参加する!
まさかの素敵なロケーションに満ち足りた気持ちになった。
楽しいので、予定時間より砂浜に長く居過ぎてしまう。
展示も見たい。
まだライヴは続いていたが、展示を見ていないという面子の車に乗せてもらい、アートスペース rin へ。展示の案内地図を貰い、福岡氏らとも合流。歩いて、散策のようにまちなかに散らばっているアート作品を見に行く。
横井彰氏の「絵を描く」は、常滑商店街に住まれている方々の顔を絵に描き、紙を民家の部屋中に貼り出した展示で、ストレートな表現が憎めない。いろいろ美 術とはなんたるかという講釈をしようとしても、作家の純粋な気持ちを見せられると「その姿勢を否定するわけではないが」と、確認したくなる印象だ。描く思 いをそのまま言葉にできるかが問われるだろう。
その近くで展示している 伊藤正人氏は「note house」という作品で、言葉を用いている。彼の作品はアートフェチでの個展から続けて見ているが、今回も言葉で絵を描くという形態が続いているように 感じられた。具体的に稜線や町並みの形状をしていなくても、言葉で壁を満たすときに、そういった操作は現れてくるようだ。日が落ちてからの鑑賞だったの で、蝋燭を手に取って壁面を照らしながら言葉を読む。それは泳ぐような感触だった。夜の海は怖いが、どこか温かい。
横井氏の車で、夜の人工海岸へ戻る。ライヴが見たいと彼は飛ばしたが、着いた頃には既に撤収作業をしているところだった。コンクリに座って缶ビールを飲んで、歩いて帰る。十月の海だが、寒くはなかった。
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