片岡鶴太郎が絵を描きはじめた頃、ドキュメント番組で氏が個展会場に遠方から到着するという場面が流れた。
こんなに奇麗に展示してくださって、ありがたい という旨のことを彼は愛嬌たっぷりに言っていた。
当時 高校生の自分には、会場を見てすらいない お任せ展示なんだと 呆れた覚えがある。
いまでも、氏が大家ぶっているという愚痴も少しは含まれてくるが、氏は絵だけを描くと仕事を割っていて、展示に関してはプロじゃないからと そういう意識もある。芸人がライヴをするときに、舞台準備からチケットやビラまで一から十まで関わらず、自分の芸づくりだけに取り組むのと同じだ。
文筆家にも本の装丁から何まで確認をして手がけたいという作家と、そうではなくお任せする作家といるだろう。自分だけでなんとかなるとやっていくのは無理があることとも思う。
どこで託し、絵はどうなるのか、作品を取り巻く環境のことを作家は考えているだろう。
キャンバスの地塗りを人に手伝わせていいのかとか、木枠や絵の具から作っているわけじゃないとか、無限の環境のなかにどう作家の仕事が位置しているのかを 自ら問うている。