土曜日, 7月 10, 2010

白けない寓話と、画だけで安心してしまうビデオレター

辛いよと話を聞いていた「ドッグヴィル」(監督, ラース・フォン・トリアー/ニコール・キッドマン/2003)を見たが、辛いというより面白くてしっかり見入ってしまった。長い映画だけれども、独特の構成が癖になり豊かに感じた。監督の意図が何処にあるのか思い巡らすこと自体が面白い。悲喜劇を皮肉に浮かび上がらせることと、寓話として押し出すが白けさせない方法であった。演劇のようだがこれはアップやカメラワークを伴った、れっきとした映画である。

ながら見で映画が見たくなり、以前に見たことのある「光の雨」(監督, 高橋判明/大杉蓮、萩原聖人、裕木奈江、山本太郎/2001)を流す。劇中劇の構造が好きになれなかったけど、いまはこういう作りも一定の効果はあるんだろうなと納得する。それでもやはり好きにはなれない。そこまで劇的な効果をあげているとは思えない。赤軍の狂った価値観を 現代の若者の良識で共感したり反論しているだけで、どうも整理整頓されてしまっている印象。萩原聖人の撮るメイキングビデオがもっと恐ろしいものを炙り出す存在になってほしかった。俳優が自ら演じた赤軍兵士へ向けて語りかけるビデオレターは面白そうな存在なのだが。画だけで安心してしまうのかもしれない。