一日中、どこにいても「麦ふみクーツェ」(著,いしいしんじ/理論社、新潮文庫/2002、2005)を読んだ。心を清算するように、一日の終わりには読み終えた。
この文章は世界への慈しみ。文章は各パートとして合奏される。
僕が好きなのはちょうちょおじさんで、憧れるのはみどり色。用務員のおじさんも、先生もおじいちゃんも大好きだ。でもおそらく僕がキャスティングされるなら、ねずみ男こと素数に取り憑かれたお父さんなのだ。臭気を放って、実験を、大雨の川に、冷たい晩に。
あああ
これは
えらく
大切な
物語だ
じゃないか
小学校一年生のときに、僕は読書感想文を「あんぱんまん」(著,やなせたかし/フレーベル館/1976)で書いて、そこに面白いのでテレビにしてください と書いて、落選したことを覚えているが、それと同じことを思ってしまった。ちなみに読書感想文のマイエピソードは話せば長くなる。小学校二年生のときは 「スーホの白い馬」(福音館書店/1967)で入選した。国語の教科書に載っていて、本を読む時間がなかったので好きだったそれにして書いた覚えがある。 入選したことに調子に乗って、三年生は意気込み過ぎて落選。何で書いたかも覚えていない。四年生は課題図書の「学校一のいたずらっ子エリザベス」(著, イーニッド・ブライトン/新学社/1987)で書いて、入選して自信を取り戻す。いま見ると明らかに女子生徒向けの本であるが、何も解らず喜んで選んで読 んだ覚えがある。五年生はまただめで、六年生は平和もので書いたと思う。中学一年のときは「夢で会いましょう」(著,村上春樹、糸井重里/講談社 /1986)を選んだ。背伸びしすぎて、よくわからぬまま書いたその文章は、確か落選した。
余談ではなく、僕はそれを書くことで救われていた。いまも同じで、「麦ふみクーツェ」はそれを思い出させてくれた。ブラッド・ベリが書いていたとかはつまらぬ理屈だし、それこそ厭世観だ。
そんなことは
どうでもいい
きみは
ここから
やっていくしか
ないんだよ
じんせいは
はじめて
ばかり
みぬかないで
おくれ
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