ガラスの向こうで、競艇用ボートが旋回を続けている。
回る回数は決められているだろうし、選手もそれを数えているだろう。けれども、ガラスのこちら側からは、あての無い運動にそれは見えた。
スタンド席で、焼きそばとどて焼きを食べた。案内の地図がわかりにくくて売店があることがわからず、屋台の出店で買ってしまった。ボートを目で追いかけながら、僕らの運動についてを話した。ここにガラスは見えない。無い。
これからはじまるレースのために、旋回運動はあったのだ。献血を断られたのは、あなたに倒れられてしまっては困るから。本末転倒だ。
競艇場で行われている「第41回 常滑焼きまつり」に行った。ここで既製品を買うのも本末転倒な気がする。でもいま欲しいという自信があるのなら、それでもいいというのも頷ける。促される 社会規範や、自己規制はときにリアルな本能を見失わさせる。昨晩 話していた「私的/公的」の問題はここにあるのだろうなと思い直す。
公的に用意されたまつりを、私的に楽しむ僕ら。交通安全を促すスーパーマリオのアニメに釘付けだ。大型工房での市もいいけど、若手作家コーナーに反応して しまう。またぶり返してきた陽射しの下で、テント出店しているのはすぐに汗だくだ。そんな姿も若く、それを選ぶお客さんらも若さに喜んでいた。「くさのう つわ」という陶器が素敵だったのを覚えている。
まつり会場を後にして まねき猫のレリーフ前を通り、散歩道のほうに出て、閉店間際のお店を物色。
そこで偶然通りかかった「rin」という大学の工房と併設したスペース前で谷澤氏にばったり。しかもいまから展覧会のオープニングパーティもあるというの で、それに参加することに。丹羽康博さんの個展「ひくとみちる」を見る。常滑に一ヶ月 滞在制作をしたもの。歩き回ったりして拾い集めたものを、見せるという仕事だった。ウレタンフォームで作られた石も拾ってきたそれだったのだが、僕はてっ きり作ったものだと思ってしまった。
貝殻のウェーブが奇麗だ。「ただ見せる」だけに徹しようとする仕事は進む切り口だと思った。
オープニングで肉じゃがなどをたくさん頂き、そこに居合わせた面々と話をした。秋に多くが参加する企画展があるらしく、元焼き釜のスペースや工房跡地を広く使うものになるらしい。
さっきまでいた常滑焼きまつりでの花火が打ち上がった。rin は高台にあるので、窓から花火を望むことができる。
駅に向かう間も、花火は続き、光の後はドンッという音が衝撃となって路地に響いていた。
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