出来上がってきた 35ミリフィルムの一本は、多重露光をしてしまっていた。それも、三つの画面が重なっている。ちょうど一年前、初夏の頃であると確認できるイメージがあっ た。僕がトランクケースを引いている背中が見える。その上に、この前行った常滑焼き祭りの人ごみが重なっていた。現像に出したフィルムは二本で、一本は多 重露光。もう一本は露光せずに写っている。笑っている金沢での表情。36枚と、24枚の束を全て積み上げて、一番上にどの写真を持ってくるかで迷う。多重 露光はイメージが定着していなくて、どうも頷けない。プールでの写真を上にした。青色のゼラチン質のテカリが返ってくる。部屋の片隅、僕らが通り過ぎて いった情景があった。長方形のこれは、アルバムに入るまで、生々しく色と像を持ってうごめいている。
これらの横で、僕は何を語ることができるだろうか。チキン丼と、ピラフで過ごす。いよいよ本当に、言葉と写真に何があるのかをはじめるときだ。