郊外の駅、消費者金融の無人店が立ち並ぶロータリーの前にあるカポックの花壇に、立て札があって「花と仲良くしてください」と書いてあった。
僕らの時間、音楽はオザケンに、サニーデイ、ベルベットアンダーグラウンド、曽我部ソロ。
北上した。紅葉が並ぶ、魅惑の山地、岐阜へ。
岐阜県美術館での、日比野克彦個展 HIBINO DNA AND… 「日比野克彦応答せよ!!」を見に。雨が降っていて、駐車場が離れたところにあって走った。濡れた。屋外に展示されていた様々な船は、屋根の下に運ばれて いた。段ボールで作られたこれらと、美術館のメインラウンジには長良川が作られるワークショップが行われている。敷き詰められた段ボールが温かい。落ち着 いた優しい色合いの中で、日々野克彦の作品群を一望する。80年代から00年代までの、それらはリ・マスタリングされたベストアルバムだ。編集は現在の感 覚で行われている。バブリーじゃない、落ち着いた視点、スローライフ的な視点とも解釈することもできるだろう。そういう落としどころについても、ポップな 強度を感じる。段ボールを剥がして構成する造形も、絵の具を引っかいて刻む言葉も、ナイーブなようでいながら図々しく HIBINO と書かれているのだ。彼はアーティストだ。四十過ぎても、子どものように段ボールを切って何かを作っている。制作風景を写したビデオの中で「やりながら次 の一手を考えている。それが楽しいんだ」ということを言っていた。
それから岐阜駅のアクティブGを見て、潰れてしまったパルコの前を通ったら、囲いにペインティングのデザインが施してあった。1234と船の頭に数字が並んでいる。やはり HIBINO であった。
夕食にラーメンを食べて、お昼は美術館のレストランでパスタだった。くつろいだ話をすることができて、帰った。雨は止まず、僕は十一時には寝てしまってた いたように思う。優しい気持ちで、くつろいでいたことまでを覚えている。運転はとても疲れるのだ。だから優しい気持ちで、僕は顔の輪郭を撫でるように描い た。
二人で掌を並べ、雨粒が作る水玉模様を写真に撮ろうとレンズを向けた。
心のなかで手を振り、部屋に戻って布団に入った。
僕の図々しさのひとつに、この日記を挙げる。
この日記がさりげなく詩のような顔をして、日記と定義できないところで、行ったり来たりしてみたらどうだろう。
http://www.dnaand.org/