木曜日, 8月 27, 2009

蟻と満月

牛乳に惹かれて蟻がやってくる。
指先をひとまわりして、聞こえないふりをしている。
空を眺めたり、足下を見つめたり、牛乳も飲むし、お金も使う。
声がやってきてくれればと、待っている。
プールの横で自由になれればいいな。
手渡すことは全てを前にすること。
私たちの贈り物は知らない顔をしていく。
聞こえているふりもする。
牛乳を届けるふりも、部屋の中に置いていってもらうふりも。
私はここからいなくなって、また帰ってくるかもしれないし、また帰ってきたいと思っている。
七月の終わり、自室では猫の鬱の餌入れに蟻がたかってくるという事態が起こっていた。キャットフードに惹かれて蟻が栄養を付けていた。
八月の金沢は名古屋よりずっと涼しく感じられたけど、部屋の床を這っていた蟻は大きかった。指先を牛乳に漬けて、惹かれるようにするまで蟻は床と布団の間に隠れていた。
川沿いから満月は見えない。
もう三日で九月だねと話すころ、もう三時間足らずで夜が明けるところだった。
部屋の冷蔵庫には梅酒が残っている。
しんのすけさんに運んでもらった瓶ビールは全て空き瓶になっていた。
ビール瓶の中を 蟻はくぐっていかないのか少し思い浮かべる。
確証よりも心配から、蟻は牛乳を月まで持っていくだろうと思う。
そうすると、ビール瓶に牛乳を入れたらどうなるかなんて思ってしまう。
台所の壁のでっぱりに名古屋市科学館でもらった月の早見表を立てかけていて、それを見ては川沿いに出たつもりになっていた。
蟻は川も知ってるか。怪我も ときどきして。
少し前に絵本を読んでいた。
牛乳は東京ストアーで求め、猫の鬱の写真を送ってもらった。太ってた。