日曜日, 12月 03, 2006

東京歩き、僕は、僕は、僕は

まるで申し合わせたかのように、早朝の渋谷には誰もいない。確かあの BYG は道玄坂にあったはずだと思い出したが、見つけることはできなかった。
ゴミ回収車と叫び合うホームレスを路上に見て、ひとり歩き続け、「煙草路地」(作詞作曲, 山本浩美/1974)を唄う。

恵比寿の「写真新世紀」展へ。いい展覧会だった。丁寧な仕事ぶりは、鑑賞者の目に届く瞬間まで続くことを思った。見ることができて良かった。
アートフロントギャラリー、シェル美術賞展とそのまま歩く。代官山のあたりは裕福な感じだ。
電車で両国に向かい、荒木経惟「東京人生」展へ。IXY を握った新作「色夏」は現在進行形であると思った。
意図は理解できるものの、江戸東京博物館の展示空間に混ざっている関係には戸惑う部分もあった。bnap05 のときにトヨタの産業技術記念館内で展示を行ったことを思い出す。博物館鑑賞と、美術鑑賞は似ているようで異なるから。

携帯電話の電池が切れたので、秋葉原で安い手回し充電器を買うが、うまく動かないので、諦めて携帯ショップにお願いしに行く。快く引き受けて頂き、待ち時 間にオタク街を社会見学。情報では知っていたが、生で見る現象は迫力が凄い。ネットアイドルの路上パフォーマンスは、見ている野郎のほうがパフォーマーの ようだ。この全体自体を見ている人もたくさんいた。タケノコ族も見せ物化してたであろう。
三十分百円という激安ネットカフェを見つけたら、メイドネットカフェと書いてある。入ると、一人だけが申し訳なさそうにメイドの格好をしていて、後は古び た漫画喫茶だった。ネットは Windows95 時代のようなノートPCでやってくださいという無茶な仕組み。それだけでも変な空間なのに、目の前でアラブ系のカップルが抱き合いながらネットサーフィン をしているというのも凄い。ここが一番カオスだったように思う。

充電を終えて、無事に秋葉原を脱出。名古屋の大須もオタク街だけど、お祭りっぽい感じは比べ物にならないと思った。ソウルを回ったときに、大規模な都市ほ ど地域毎に専門化を進めて個別に発展していくということを学んだが、東京はまさしくそうで、渋谷と恵比寿、代官山、両国に秋葉原は全て異なる。東京に住ん でいる人でも、ぜんぜん行かない街もあるだろう。
そして新宿に戻った。深夜のバスで名古屋に帰還する。アルタ前まで歩くときに、駅の南口でやっていた工事の囲いに、おそらく写真家による企画作品がプリン トされているのを見つけた。面白いなと思っていたら、路上スナップのシリーズに、森山大道や電撃ネットワーク、鈴木慶一もいるではないか。嬉しくなって、 電池が不安な携帯でパチリ。後で調べたら、これは吉永マサユキによる写真のプロジェクトだった。

十一時までやっている喫茶店に入って、今回の東京の話をたくさんした。
今日見て来た展覧会の話もたくさんした。
話は尽きぬこと無かったが、バスのリクライニングを倒すと、眠気は襲いかかってきた。

さあ、煙草に火を点けて
どこへ、どこへ、行こう
さあ、煙草の煙をくゆらせて
どこへ、どこへ、行こう

破れズックをつっかけて、穴開けポッケに手を突っ込んで
のばした髪を風になぶらせて、小便臭い路地を行けば

何にも考えはしないけど、僕は、僕は、僕は
何にも話はしないけど、僕は、僕は、僕は

僕のこの心の奥底から、汲めど尽きないものが湧きいづることを

さあ、煙草に火を点けて
・・・

(作詞作曲, 山本浩美/1974)

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