愛は冷凍保存できない。
どこかの瞬間で決定的に、あ!そうだ!こうしよう!というときが必ず来るはず。
いま思っていることを「次」の為に取り繕う付き合い方をするんではなくて、いまの気持ちに正直にいくしかない。
僕はそういう意味で「次」の為にと頭を高速回転と起動させすぎた。
彼女はそれを全て見抜いていた。
愛することは勇気が要ることで、僕にはその勇気が足りなかった。
僕はすべてを愛していかなきゃいけなかったんだ。
それは損とかそういうことではない。
それこそが浮気ではなくて荒木なんだ。
荒木はきっと、全てを愛することをしているんだ。
いま僕は全部分かった。
本当に、自分100%に振り回して傷つけた。
部屋は廃墟のようにがらんとしていて、猫の欝が寝ている。
そしてこの猫の鬱こそが、僕らの愛の魂なのだと思う。
もうだめかもしれないけど、いま目の前で眠ってくれているので、なんとか生きる力が湧いてきてしまう。血と骨は残酷に栄養価を吸収する。
芋のケーキを食べて、泣きたいのに泣けない。
昔の日記や写真を見たら、少し泣けるかもしれない。
涙を報告するなんて真似はしたくない。
いま考えて、言葉にすることができて、言いたいこと、伝えたいことだけを書いている。いま作っている作品は「抱きしめる」で、それはもうこの毎日そのものだ。
彼女からもらった「ミュージック・マガジン」にあった鈴木慶一の写真を、破いて壁に貼った。白髪頭に無精髭を生やしてこちらを見ている写真である。